「ただ、自分の力が発揮できない場所にいるだけ」
アメージングカレッジを運営する町山辰也氏が、子どもたちについて語った言葉だ。
学校へ行けない。
授業中にじっとしていられない。
先生の言うことを聞かない。
友達とうまく関われない。
集団の中で同じ行動ができない。
そんな姿を見ると、私たちはつい「その子の問題」を探してしまう。
けれど、本当に問題は、その子の中だけにあるのだろうか。
人が力を発揮できないとき、変えるべきなのは本人ではなく、環境なのかもしれない。
「問題がある子」がやってくる
アメージングカレッジには、これまでの学校生活の中でさまざまな難しさを抱えてきた子どもたちがやってくる。
町山氏によれば、現在通う子どもたちの多くが、何らかの問題を抱えて学校に来た子たちだ。
一人いるだけで、これまでいた学校では学級運営が難しくなる。
そんな子もいる。
だからといって、アメージングカレッジがすべての子どもを無条件に受け入れているわけではない。
新しい子を迎えるタイミングを考える。
面談をする。
その子にとって、本当にここが合っているのかも考える。
大切なのは、ただ受け入れることではない。
その子が、その子の力を発揮できる場所を探すことだ。
「たっちゃん、なんか手伝うことある?」
学校では、子どもを机の前に座らせることが「教育」になることがある。
でも、アメージングカレッジでは、それだけが学びではない。
教室を開ける。
外へ出る。
遊ぶ。
料理をする。
大人と一緒に何かをつくる。
そんな日々を過ごしていく。
町山氏は、ある子どもの変化を話している。
最初はなかなか動かなかった子が、数か月後、町山氏が料理をしているところへやってきた。
「たっちゃん、なんか手伝うことある?」
誰かに言われたわけではない。
授業でもない。
評価されるためでもない。
自分から近づき、自分から役割を探した。
町山氏は、その姿を見て、
「この子たちの本来の姿に戻ってきたな」
と感じたという。
ここで起きているのは、「問題のある子が良い子になった」という話ではない。
その子が安心して自分を出せる場所に移ったことで、もともと持っていたものが表に出てきた。
そう捉えることもできる。
人は、場所によって違う人になる
会社では話せないのに、友人の前ではよく話す人がいる。
学校では落ち着かないのに、好きなことには何時間も集中できる子がいる。
大勢の前では力を発揮できないのに、一対一になると驚くほど豊かに話す人もいる。
人は、どこにいても同じではない。
周囲にいる人。
求められる役割。
評価される基準。
安心できるかどうか。
それによって、表に出てくる自分は変わる。
それなのに、ある一つの場所でうまくいかないと、
「協調性がない」
「やる気がない」
「問題がある」
と、その人自身の性質として決めてしまうことがある。
でも、
「この人はダメだ」と「この場所では力を発揮できない」は、まったく違う。
「変える」の前にできること
もちろん、環境を変えればすべてが解決するわけではない。
本人が学ばなければならないこともある。
向き合わなければならないこともある。
それでも、誰かがうまくいっていないとき、
「どうすればこの人を変えられるだろう」
だけではなく、
「この人が力を発揮できる場所は、どんな場所だろう」
と考えることはできる。
それは、教育だけの話ではない。
会社でも。
家庭でも。
地域でも。
人間関係でも。
私たちは、人を変えようとする前に、その人を取り巻く環境を見ることができる。
学校で「問題がある」と言われた子が、別の場所では誰かを助ける人になることもある。
教室で座っていられなかった子が、料理をしている大人の隣では、自分から仕事を探し始めることもある。
「たっちゃん、なんか手伝うことある?」
その一言が教えてくれる。
その子に力がなかったわけではない。
まだ、その力が出てくる場所に出会っていなかっただけなのかもしれない。
