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インタビュー

「守ってもらう防災から、自分たちでつくる防災へ。」
——廃校を"日常と有事がつながる場所"に変える、キボッチャの挑戦

2026.09.22/OSUSO JOURNAL 編集部
廃校を活用したキボッチャの校舎
すでに地域にあるものを、どうつなぐか。そこから生活インフラをつくる

災害が起きたら、誰が私たちを助けてくれるのだろう。

行政。消防。自衛隊。支援団体。もちろん、それぞれが重要な役割を担っている。

けれど、大規模な災害が起きたとき、すべての人に、必要な支援がすぐ届くとは限らない。

では、そのときまで私たちは、「助けが来るのを待つ側」でいるしかないのだろうか。

宮城県東松島市で進む「キボッチャ」の構想には、その問いに対する一つの考え方がある。

自分たちの生活インフラを、
自分たちの手でつくる。

彼らがそれを「民間インフラ」と呼んでいる。

「公共に委ねる」だけではない

キボッチャがあるのは、東日本大震災の被災地域。廃校を活用し、平常時は地域コミュニティの拠点として、災害時には避難所として機能する「スマートエコビレッジ」をつくろうとしている。

その考え方について、運営する貴凛庁株式会社は会議の中で、「公共に委ねる」だけではなく、自分たちの生活インフラを民間としてつくっていくと説明している。そして、自分たちの手でつくることによって、防災が「自分ごと」に変わっていく、と語った。

これは、行政の役割を否定する話ではない。行政か民間か、という二者択一でもない。

行政が支える領域に加えて、市民や企業にも「自分たちでつくれる領域」があるのではないか。その可能性を広げる取り組みだ。

防災を「サービス」にしない

誰かがつくった避難所を使う。誰かが備蓄したものを受け取る。誰かが助けに来てくれるのを待つ。それだけなら、防災における私たちは「利用者」になる。

しかし、自分たちがつくる側に回れば、関係が変わる。

キボッチャでは、企業経営者などが「村長」として各拠点の運営や資金づくりに関わる仕組みが構想されている。さらに1,000人のデジタル住民が、スマートエコビレッジの構築に関わる仕組みもある。

一部の専門家だけが防災を担うのではない。企業も。地域住民も。遠くに住む人も。それぞれが持っているものを持ち寄り、生活基盤をつくっていく。

「守ってもらう人」を増やすのではなく、「一緒につくる人」を増やす。その発想が、キボッチャの民間インフラを支えている。

子どもたちが火を使って調理する体験
自分たちの手で動かしてみることで、防災が「自分ごと」に変わっていく

企業が持っているものも、防災資源になる

この考え方に立つと、企業の役割も変わって見えてくる。企業が社会に提供できるものは、寄付だけではない。

人がいる。技術がある。設備がある。ネットワークがある。地域との接点をつくる力がある。

キボッチャでは、従業員が日常から防災の取り組みに参加し、避難訓練などの場づくりに関わることを、企業の福利厚生やCSRとも結びつけるモデルを検討している。

社会貢献を「本業とは別にするもの」と考えるのではなく、企業が持つ力そのものを地域のインフラへ変えていく。これは、防災における企業と地域の関係を考え直す視点でもある。

使われていないものにも、役割がある

自分たちでつくるといっても、すべてをゼロから用意する必要はない。キボッチャが活用しているのは、廃校だ。

さらに、耕作放棄地や使われていない畑などを「未利用資源」と捉え、食料生産や避難拠点として生かす取り組みも進められている。

地域に足りないものを外から持ってくる前に、すでに地域にあるものを見る。使われていない場所。余っている食材。眠っている技術。つながっていない人。

「ないもの」を探すのではなく、「すでにあるものを、どうつなぐか」。そこからインフラをつくる。

これはOSUSOが大切にする「おすそわけ」という考え方にも重なる。一人ですべてを持つ必要はない。自分が持っているものを少しずつ持ち寄ればいい。

「自分たちでつくる」は、責任を増やすことではない

「自分たちで防災を」と聞くと、負担が増えるように感じるかもしれない。自分の身は自分で守れ。行政に頼るな。そんな自己責任の話に聞こえる可能性もある。

けれど、キボッチャが目指す「自助・共助」は、一人で何とかすることとは違う。むしろ反対だ。

一人ではできないから、つながる。自分にないものを、誰かから分けてもらう。自分にあるものを、誰かに渡す。その関係を、災害が起きる前からつくっておく。

「自分たちでつくる」とは、一人で背負うことではなく、支え合える人を増やすことなのかもしれない。

防災の主体は、誰だろう

災害が起きれば、公的な支援は必要になる。それは変わらない。けれど、その前に私たちにもできることがある。

地域の中にある場所を知る。人とつながる。企業が持つ技術を生かす。使われなくなった資源に、新しい役割を与える。

そうして平時から生活基盤をつくっておけば、有事になった瞬間、ゼロからすべてを始めなくて済む。

守ってもらう防災から、自分たちでつくる防災へ。それは行政から役割を奪うことではない。「防災をする人」と「守られる人」を分けないことだ。

誰かがつくった社会に暮らすだけではなく、自分も、その社会をつくる一人になる。災害が起きたときだけではない。何も起きていない今日から。

私たちは、自分たちが暮らす場所を、自分たちで少しずつ強くしていける。キボッチャがつくろうとしているのは、避難所だけではない。そんな「社会との関わり方」そのものなのである。

原 綾香
この記事の構成・監修
原 綾香 はら あやか
言語戦略コンサルタント/元アナウンサー・OSUSO JOURNAL 編集監修

NHK秋田放送局・UTYテレビ山梨(TBS系列)でアナウンサーを務め、取材・構成・番組演出まで担当。NHK放送局長賞を2度受賞。その後、経営者向けコーチング会社で営業No.1を決める「S-1グランプリ」に女性で初めて完全優勝。現在は言語戦略コンサルタントとして、経営者のスピーチや営業のプレゼンを支援。「言葉が変われば、選択が変わる」を軸に、事実と当事者の尊厳を大切にした記事づくりを監修しています。

民間の力で、暮らしの基盤をつくる

行政に委ねるだけではなく、企業や住民が持ち寄る。キボッチャとOSUSOが目指す「民間インフラ」を。

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