「住民」と聞けば、その土地に住んでいる人を思い浮かべる。
住所がある。
家がある。
毎日そこで暮らしている。
それが、これまでの「住民」だった。
でも。
その場所には住んでいなくても、
その場所のことを考え、
その未来に関わる人がいたらどうだろう。
地域との関係は、「住んでいる・住んでいない」の二つだけなのだろうか。
キボッチャには、1,000人の「デジタル住民」がいる。
1,000人が持つ、一票
キボッチャでは、スマートエコビレッジの構築にDAOの仕組みを取り入れている。
取材時点で、デジタル住民票のNFTを持つ人は1,000人に到達していた。
特徴的なのは、それが単なる会員証ではないことだ。
保有者には、スマートエコビレッジを構築していくうえでの議決権が与えられている。
つまり、施設側がすべてを決め、それを利用者が受け取るだけではない。
この場所をどうつくるのかを、参加する人も一緒に考える。
「利用者」から「つくり手」へ。
地域との関わり方が、少し変わる。
暮らしに必要なものを、自分たちで考える
キボッチャのスマートエコビレッジでは、食やエネルギー、水、住居、移動など、暮らしに関わる複数の要素について研究・実証が進められている。
その根底にあるのが、「自分たちの生活インフラを、自らの手でもつくっていく」という考え方だ。
誰かが用意したものを使うだけではない。
自分たちが暮らすために何が必要なのかを考える。
選ぶ。
参加する。
そのプロセスを通じて、地域や暮らしの問題が「誰かの仕事」ではなくなっていく。
取材では、それによって一人ひとりの意識が「自分ごと」に変わっていくことも語られていた。
地域を自分ごとにするには、そこに住むことだけでなく、「決める側」に入ることも一つの方法なのかもしれない。
距離があっても、関係はつくれる
デジタル住民という仕組みがおもしろいのは、地域との関係を住所だけで決めないところにある。
離れた場所に暮らしていても、
考えることはできる。
参加することはできる。
応援することはできる。
もちろん、実際にその土地で暮らす住民と、デジタルで参加する人は同じではない。
でも、「住んでいないから関係がない」と切り離す必要もない。
地域と人との間には、
住民か観光客か、だけではない関係があっていい。
「自分の地域」は、一つでなくていい
生まれ育った場所。
今暮らしている場所。
仕事で出会った場所。
旅をして好きになった場所。
誰かとの出会いをきっかけに、気になるようになった場所。
私たちは、いくつもの土地と関係を持ちながら生きている。
その中に、
「ここに住んではいないけれど、なくなってほしくない」
と思う場所があってもいい。
住所は一つでも、関わる地域は一つでなくていい。
キボッチャの1,000人のデジタル住民が示しているのは、そんな地域との新しい距離感でもある。
「どこに住んでいますか」だけではなく、
「どの場所に関わっていますか」。
いつか、
そんな問いの方が自然になる日が来るのかもしれない。
