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コラム

「学校に合わせる」のではなく「私に合った学校を」
今、フリースクールが必要な理由

2026.09.01/OSUSO JOURNAL 編集部

朝になると、おなかが痛くなる。制服に着替えようとすると、涙が出る。学校の門までは行けても、その先へ足が動かない。

不登校の子どもの話を聞くとき、私たちはつい「何があったのだろう」と原因を探します。いじめだろうか。勉強についていけないのだろうか。家庭に何か事情があるのだろうか、と。

けれど、理由はいつも一つではありません。教室のざわめきが苦しい子もいます。みんなと同じ速さで動くことに疲れてしまう子もいます。先生との関係、友人との距離、校則、宿題、給食。大人から見れば小さなことが、毎日積み重なって、心をいっぱいにしてしまうこともあります。

文部科学省の調査では、小中学校の不登校の子どもは約30万人を超え、過去最多を更新し続けています。これほど多くの子どもが、学校へ行けない、あるいは行かない選択をしている。問題は本当に「学校に行けないこども」にあるのでしょうか。

うちの子が、学校に行きたがらなくて。無理にでも行かせるべきか、休ませていいのか、毎朝わからなくなるんです。

原 綾香

その迷いは、当然だと思います。ただ、問いを少しだけ変えてみませんか。「どうやって学校に戻すか」ではなく、「この子は、どこでなら安心できるか」へ。

戻すこと以外の道を、考えてもいいんですね。

合わない靴を、履き続けさせていないか

以前、知人の子どもが学校へ行けなくなりました。その子は、決して勉強が嫌いなわけではありません。本を読むのが好きで、興味を持ったことは大人が驚くほど深く調べます。でも、大人数の教室で、決まった時間割に沿って、同じ答えを求められることが、苦しかったそうです。家にいると元気なのに、「学校」という言葉が出た途端、表情が曇る。

知人は当初、「何とか戻さなくては」と焦っていました。周囲からも「休み癖がつく」「今のうちに頑張らせないと」と言われたそうです。

合わない靴で歩いていたがっている人に、私たちは
「もっと頑張って歩こう」と言うでしょうか。

靴擦れで血がにじんでいるなら、必要なのは根性ではありません。立ち止まること。靴を脱ぐこと。そして、その足に合う別の靴を、一緒に探すことです。学校に合わないことも、それに近いのではないでしょうか。

これまで不登校は、子どもが乗り越えるべき「問題」として語られがちでした。けれど、学校に通う子どもが増えることだけをゴールにすると、その子が何に苦しみ、どんな環境なら安心して学べるのかが、見えにくくなります。「学校に戻れたか」ではなく、「その子が自分らしく、学べているか」。ものさしを少し持ち替えるだけで、見える景色は変わります。

フリースクールは「学校の代わり」だけではない

そこで大切になるのが、フリースクールをはじめとする、学校外の学びの場です。フリースクールと聞くと、「不登校の子が一時的に通う場所」という印象を持つ人もいるかもしれません。もちろん、心を休め、生活のリズムを取り戻す場でもあります。でも、それだけではありません。

少人数でじっくり話を聞いてもらえる。好きなことから学びを広げられる。料理や畑仕事、音楽、ものづくりを通して人とつながれる。何もしない時間さえ、急かされずに過ごせる。そこには、教科書のページ数だけでは測れない学びがあります。

近年は、フリースクールのほかにも、自然体験を軸にした学校、子どもの自主性を尊重する場、オンラインで学べる環境など、オルタナティブ教育の選択肢が少しずつ広がっています。オルタナティブとは、「もう一つの選択肢」という意味です。

大切なのは、従来の学校と競わせることでも、否定することでもありません。公立学校が合う子もいれば、少人数の場で力を発揮する子もいる。毎日通いたい子もいれば、週に数日から始めたい子もいる。子どもが多様なら、学び方も多様でいい。それは、特別な子どものための特別な話ではなく、誰にとっても「選べる場所がある」という安心を、社会に増やす話です。

「行ける場所」が、一つ増えるということ

一方で、フリースクールには課題もあります。地域によって数に差があり、近くに通える場所がない家庭もあります。利用料がかかり、経済的な負担が大きいこともあります。運営者の熱意に支えられているところが多く、続けることの難しさもあります。

多様な学びを「選べる」と言いながら、住む場所や家庭の収入によって選択肢が狭まるのなら、それは本当の意味での選択とは言えないでしょう。だからこそ、不登校を家庭だけの責任にしないことが大切です。子どもの居場所を、社会全体で支える仕組みが要ります。

そして実際に、こういう学校をつくり、地域に根づかせ、続けようとしている人たちがいます。採算や制度の壁にぶつかりながらも、「ここなら自分らしく息が吸える」と子供たちが思える場所を、守ろうとしている人たちです。

とはいえ、私たち全員が学校をつくる必要はありません。身近な子どもが立ち止まったとき、「どうして行けないの?」より先に、「いま、どんな気持ち?」と聞いてみる。保護者に「大変だね」だけでなく、「何かできることはある?」と声をかけてみる。近くの学びの場を、一度調べてみる。そんな小さな行動も、多様な学びを支える一歩になります。

学校に行かないことが「悪」なのではありません。自分に合う学校が見つかっていないだけなのです。ただ、その子に合う道が、他の子たちの道とは違っただけかもしれない。もし目の前の子どもが立ち止まっていたら、元の道へ急いで戻すのではなく、一緒に地図を広げてみる。その地図に、まだ知らない小道を一本、描き足してみる。私たちにできることは、案外そこから始まるのではないでしょうか。

よくある質問

フリースクールとは何ですか?+

フリースクールとは、学校以外の場所で、子どもの学びや居場所を支える民間の施設や活動です。通い方や過ごし方は、一人ひとりに合わせて選べます。

フリースクールに通うと、学校には戻れなくなりますか?+

そんなことはありません。学校に戻る子もいれば、別の学びの場を選ぶ子もいます。大切なのは戻ることではなく、その子が安心して学べる場所を見つけることです。

不登校は、親の育て方が原因ですか?+

原因を一つに決めることはできません。教室の環境、人との距離、体調など、いくつもの要素が重なります。家庭だけの責任にしないことが、次の一歩につながります。

フリースクールは、費用がかかりますか?+

多くは民間の運営のため、利用料がかかる場合があります。金額や支援のしくみは地域や施設で異なるので、見学のときに確かめると安心です。

原 綾香
この記事の監修
原 綾香 はら あやか
言語戦略コンサルタント/元アナウンサー・OSUSO JOURNAL 編集監修

NHK秋田放送局・UTYテレビ山梨(TBS系列)でアナウンサーを務め、取材・構成・番組演出まで担当。NHK放送局長賞を2度受賞。その後、経営者向けコーチング会社で営業No.1を決める「S-1グランプリ」に女性で初めて完全優勝。現在は言語戦略コンサルタントとして、経営者のスピーチや営業のプレゼンを支援。「言葉が変われば、選択が変わる」を軸に、事実と当事者の尊厳を大切にした記事づくりを監修しています。

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廃業した結婚式場を“秘密基地”に変え、「学校をつくること」と「続けること」の間で闘ってきた学園長がいます。amazing college・町山辰也さんの物語を。

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