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インタビュー

「知らない未来は、選べない。」
——アスリートの選択肢を増やすのは、「仕事」ではなく「社会との接点」だった

2026.09.27/OSUSO JOURNAL 編集部
オンラインで集まるアスレチカのメンバー

「引退したら、何をする?」

アスリートにとって、この問いは簡単ではない。

幼い頃から一つの競技に打ち込み、練習し、試合に出て、また練習する。競技を極めようとするほど、生活の中心はその世界になっていく。

では、その外側にどんな仕事があり、どんな会社があり、どんな生き方をしている人がいるのか。

知らないまま、未来を選ぶことはできるのだろうか。

アスリートのセカンドキャリア支援に取り組むアスレチカ代表・宮越祐介氏は、その課題を「仕事がない」という問題だけでは捉えていない。

宮越氏が大切にしているのは、アスリートが**「社会を知ること」**だ。

「村社会」の外へ

宮越氏は、アスリートが置かれている環境を「村社会」のようだと表現する。

一つの競技に打ち込む。同じ競技の選手と過ごす。指導者や競技関係者と関わる。

その環境だからこそ、競技者として高いレベルを目指せる。

一方で、社会との接点は限られていく。

会社はどう動いているのか。経営者は何を考えているのか。どんな仕事が世の中にあるのか。自分が競技で身につけてきたものは、どこで生かせるのか。

知らなければ、選択肢そのものが見えてこない。

だからアスレチカの6か月間のプログラムでは、自己理解や社会理解、ビジネスの基礎を学ぶ。

まず、自分を知る。そして、社会を知る。その二つをつなぐ。

参加したアスリートたちは、起業、キャリアチェンジ、競技への復帰など、それぞれ異なる道へ進んでいる。

全員に同じ答えを渡すのではない。

自分の人生のハンドルを、自分で握れる状態をつくる。

宮越氏が目指しているのは、そこだ。

人と出会うと、未来が増える

三重県伊勢志摩市で活動するブラジリアン柔術のアスリートは、プログラムへの参加をきっかけに地域との接点を広げていった。

加工品の販売に関わる。ECサイトをつくる。地域の人とつながる。

やがて、自らビジネスを生み出すまでに活動が広がっていった。

誰かに「この仕事をしなさい」と言われたわけではない。

社会と接点を持ったことで、自分の力を使える場所が見つかった。

宮越氏は、経営者とのつながりから雇用につながった人、一緒にビジネスを立ち上げた人、フランチャイズに加盟した選手もいると話す。

そして、その価値をこう表現する。

「社会を知って、選択肢の可能性が広がることじゃないですか?」

選択肢は、「今」も変える

社会を知ることは、引退後のためだけではない。

宮越氏によれば、キャリア形成やビジネスを学んだことで、競技の成績が上がる選手もいる。

考える力が身につく。練習を組み立てる。戦略や戦術を細かく考える。チームづくりやリーダーシップを競技の中で実践する。

競技の外で学んだことが、競技の中へ戻っていく。

「競技以外を見ること」は、競技から離れることではなかった。

世界を広げたことで、今いる場所の見え方まで変わっていく。

100人の経営者とつくる選択肢

宮越氏が次に目指しているのは、100名の経営者とのつながりだ。

経営者一人ひとりが持つ仕事、経験、知識、人脈。それらがアスリートとつながれば、社会との入口はさらに増える。

宮越氏はこう話している。

「数はエネルギーの源泉なので、数はエネルギーに変わっていく」

100人いれば、100通りの社会との接点が生まれる。

そこから雇用が生まれることもある。事業が始まることもある。競技を続けるという決断につながることもある。

アスレチカが増やそうとしているのは、決められた「次のキャリア」ではない。

自分で人生を選ぶために必要な、社会との接点だ。

知らない未来は、選べない。

だから彼らは、アスリートがまだ知らない世界への扉を、一つずつ増やしている。

原 綾香
この記事の構成・監修
原 綾香 はら あやか
言語戦略コンサルタント/元アナウンサー・OSUSO JOURNAL 編集監修

NHK秋田放送局・UTYテレビ山梨(TBS系列)でアナウンサーを務め、取材・構成・番組演出まで担当。NHK放送局長賞を2度受賞。その後、経営者向けコーチング会社で営業No.1を決める「S-1グランプリ」に女性で初めて完全優勝。現在は言語戦略コンサルタントとして、経営者のスピーチや営業のプレゼンを支援。「言葉が変われば、選択が変わる」を軸に、事実と当事者の尊厳を大切にした記事づくりを監修しています。

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