知っている選手がニュースに出る。
それだけで、少しうれしくなる。
試合があれば見に行く。ユニフォームを買う。クラウドファンディングが始まれば応援する。
アスレチカ代表・宮越祐介氏が語る、ビジネスアスリートクラブ(BAC)に参加する経営者たちの姿だ。
「アスリート支援」と聞けば、企業や経営者がお金を出し、選手を支える構図を思い浮かべる。
けれど、アスレチカで起きていることは、それだけではない。
経営者はアスリートを応援する。
そして経営者自身も、アスリートから勇気や励みを受け取っている。
応援は、一方向に流れるものではなかった。
経営者だから渡せるもの
競技の世界を中心に生きてきたアスリートにとって、経営者との出会いは、社会を知る入口になる。
どんな会社があるのか。
どんな仕事があるのか。
どうやって事業は生まれるのか。
自分の経験をどこで生かせるのか。
経営者が持つ経験や人脈が、アスリートの選択肢を増やしていく。
実際に、BACで生まれた接点から雇用につながったケースがある。
経営者と一緒にビジネスを立ち上げた人もいる。
フランチャイズに加盟した選手もいる。
宮越氏は「BACに入ってくださったからこそ接点が生まれ、そういう結果が生まれている」と話す。
アスリートだから渡せるもの
では、経営者は何を受け取るのか。
宮越氏は「勇気や励み」と答える。
勝てる保証がなくても、練習する。
負けても、次の試合へ向かう。
一つの目標に向かって、毎日身体を動かす。
そんなアスリートの姿が、経営者の心を動かす。
会社経営も、結果が約束された世界ではない。
何かを決断する。
失敗する。
立て直す。
また進む。
だから、競技に向き合う選手の姿が、自分自身の仕事と重なる。
宮越氏は、経営者が試合へ足を運び、選手のユニフォームを買い、クラウドファンディングを応援する様子を見て、
「そういう空気感とか絵ってすごく素敵だなと思う」
と話している。
「支援する側」を固定しない
お金を持っている人が、持っていない人へ渡す。
知識がある人が、知らない人へ教える。
支援という言葉には、ときにそんな一方向の構図が生まれる。
けれど、アスレチカの現場では違う。
経営者は人脈を渡す。
アスリートは勇気を渡す。
経営者は仕事の機会を渡す。
アスリートは、ひたむきに取り組む姿を見せる。
それぞれが、自分にあるものを渡している。
そこには、OSUSOが大切にする「おすそわけ」と同じ循環がある。
100人がつながると、何が起きるのか
宮越氏が掲げる次の目標は、100名の経営者を集めることだ。
「数はエネルギーの源泉」
そう宮越氏は言う。
100人の経営者がいれば、100通りの経験がある。100通りの人脈がある。100通りの会社や仕事がある。
そこにアスリートがつながっていく。
さらに宮越氏は、アスレチカ自身が事業をつくり、現役や引退した選手がビジネスを体験できる場を持つことも構想している。
支援金を集めて終わるのではない。
人と人がつながり、仕事が生まれ、また誰かに機会が渡っていく。
一人の選手を応援したことから、仕事が生まれる。
その仕事で成長した選手の姿が、今度は経営者を励ます。
そして、その経営者が次の選手へ手を差し伸べる。
アスレチカが増やそうとしているのは、支援者ではない。応援が循環する関係そのものだ。
