午前1時に寝て、午前5時に起きる。
軽井沢から東京へ向かい、仕事をする。そしてまた、軽井沢へ戻る。
宮越祐介氏は、40代になった今もそんな生活を続けている。
もちろん、しんどい日もある。
そんなとき思い出すのが、大学時代の夏合宿だ。
坂道を何度も走った。
「あの坂ダッシュの方が全然つらかった」
そう思うと、もう少し頑張れる。
宮越氏は、アスリートのセカンドキャリアを支援するアスレチカの代表だ。
けれど、その生き方を見ていると、「セカンドキャリア」という言葉さえ少し違って見えてくる。
宮越氏は言う。
「引退したと思う。やることって変わんないんだよ」
競技が終わっても、人生への向き合い方まで変える必要はない。
タイパ、コスパとは逆の世界
宮越氏は、アスリートの生活を「今の時代のタイパ、コスパと真逆」だと表現する。
練習したからといって、必ず勝てるわけではない。
努力した時間が、そのまま結果になる保証もない。
それでも練習する。
昨日できなかったことを、今日もう一度やる。
負ければ原因を考える。
また試す。
結果が出るまで続ける。
アスリートにとっては、当たり前のことだ。
しかし社会に出ると、その「当たり前」が一つの力になる。
競技で育ったものは、競技場に置いていかない
アスレチカの6か月間のプログラムでは、自己理解、社会理解、ビジネスの基礎を学ぶ。
そこでアスリートたちは、自分が競技を通じて何を身につけてきたのかを見つめ直す。
考える力。
戦略を立てる力。
チームをつくる力。
リーダーシップ。
そして、行動を続ける力。
宮越氏は、成長する人について「謙虚で、素直で、行動し続ける人」と話す。
そして、その資質を持っているアスリートは多いという。
競技しかしてこなかった。
だから社会では何もできない。
そうではない。
競技に打ち込んできたからこそ、身についたものがある。
必要なのは、それを社会の中でどう使うかを知ることだ。
「一流のビジネスマンにもなれる」
宮越氏には、証明したいことがある。
「一流のアスリートって、一流のビジネスマンにもなれるよね」
競技で培った力が、社会の中でも価値を持つこと。
その実例を増やしていくこと。
実際にアスレチカの参加者は、起業したり、キャリアチェンジをしたり、新しいビジネスを始めたりしている。
社会を学んだことが競技へ戻り、成績向上につながる選手もいる。
競技とビジネス。
現役と引退後。
別々の世界のように見えるものが、宮越氏の中ではつながっている。
60歳、70歳になっても
宮越氏は、自分が60歳、70歳になっても現場に立つつもりだと話す。
若いアスリートたちに、
「こんな親父でもこれだけやってるんだから、お前サボんじゃねえ」
と言い続けたいという。
少し乱暴で、宮越氏らしい言葉だ。
でも、ここに彼の支援の方法がよく表れている。
教えるだけではない。
支えるだけでもない。
自分自身が動き続ける。
背中を見せ続ける。
取材を終えたその日も、午後3時、4時、5時と、BACの新規営業が入っていた。
すべて、自ら動いて取ったアポイントだった。
60歳になっても。
70歳になっても。
宮越祐介は、若いアスリートたちの前に立つつもりでいる。
そして、きっと同じことを言う。
「こんな親父でもこれだけやってるんだから、お前サボんじゃねえ」
