宮越祐介氏には、一つの数字の目標がある。
100人。
アスレチカに賛同する経営者を、まず100人集める。
なぜ100人なのか。
宮越氏はこう言う。
「数はエネルギーの源泉なので、数はエネルギーに変わっていく」
アスリートのキャリア支援というと、一人ひとりに仕事を紹介する活動を想像するかもしれない。
けれど宮越氏が描いているものは、もっと大きい。
アスリートと経営者がつながる。
そこから仕事が生まれる。
人脈が広がる。
新しい事業が始まる。
さらに、その中で生まれたものが次のアスリートへ渡っていく。
宮越氏は、それを「アスレチカ経済圏」と表現している。
一人では、渡せるものに限界がある
宮越氏は、アスレチカの活動に自身の時間の大半を使っている。
役員報酬はゼロ。
資金が十分でなかった時期には、必要な費用を自分のキャッシュから出していたこともあったという。
けれど、一人の力だけでは続かない。
どれだけ思いがあっても、支援できる人数には限界がある。
持続可能な仕組みにするには、支える人を増やさなければならない。
そこで大きな意味を持つのが、経営者とのネットワークだった。
資金だけではない。
スキル。仕事。人脈。社会経験。
経営者一人ひとりが持っているものを、アスリートとつなぐ。
それが、アスレチカの活動そのものを広げていく。
すでに、仕事が生まれている
そのつながりは、すでに具体的な変化を生んでいる。
経営者との接点から、雇用につながったアスリート。
一緒にビジネスを立ち上げた人。
フランチャイズに加盟した選手。
三重県伊勢志摩市では、ブラジリアン柔術のアスリートが地域のビジネスに関わり、加工品の販売やECサイトの構築などへ活動を広げた。
これは「引退後の就職先を紹介する」という話とは少し違う。
アスリートと社会がつながることで、それまで存在しなかった仕事そのものが生まれている。
仕事を探すだけではなく、仕事をつくる側にも回る。
宮越氏が「一流のアスリートは、一流のビジネスマンにもなれる」と語る背景には、こうした実例がある。
「支援」から「経済圏」へ
そして宮越氏は、もう一歩先を見ている。
今後、アスレチカ自身でも事業をつくる。
現役、あるいは引退したアスリートが、そこでビジネスを体験できる場所を持つ。
経営者とのネットワークがあれば、顧客になる人がいる。
仕事を依頼してくれる人もいる。
アドバイスをくれる人もいる。
そこで売上が生まれれば、活動を継続する資金にもなる。
資金があるから、次のアスリートを支えられる。
その選手が社会とつながる。
また新しい仕事が生まれる。
支援を「誰かの善意」に依存させるのではなく、循環する構造に変えていく。
それが「アスレチカ経済圏」という構想だ。
100という数字の先に
100人の経営者が集まった風景を想像する。
ある経営者は、選手を自社へ迎える。
ある経営者は、新しい事業を一緒につくる。
ある経営者は、地域の人を紹介する。
ある経営者は、試合会場で声援を送る。
そしてアスリートもまた、その人たちへ自分の経験や力を返していく。
そこでは、誰が支援する側で、誰が支援される側なのかという境界は薄くなる。
人がつながる。
仕事がつながる。
経験がつながる。
そして、次の機会が生まれる。
宮越氏は、その起点となる100人を集めようとしている。
100人集まれば、アスリートが社会と出会う入口は、100通りになる。
