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インタビュー

「一流のアスリートは、一流のビジネスマンにもなれる。」
——競技で培った力を、人生の力へ。アスレチカ代表・宮越祐介の挑戦

2026.09.26/OSUSO JOURNAL 編集部
アスレチカの活動に集まる人たち
アスリートと経営者が学び合う場を、全国につくろうとしている

「一流のアスリートって、一流のビジネスマンにもなれるよねっていうのを、証明していく」

一般社団法人アスレチカ代表・宮越祐介氏は、そう語る。

アスリートには、競技を通じて身につけてきたものがある。毎日練習する。結果が出なくても続ける。自分の課題と向き合う。負けても、また立ち上がる。

簡単に身につく力ではない。それなのに競技を離れた瞬間、「自分には何ができるのだろう」と立ち止まってしまうアスリートがいる。

競技で積み重ねてきた何年、何十年という時間は、競技の外では価値を持たないのだろうか。宮越氏は、そうは考えていない。

競技で培った力は、
競技のためだけの力ではない。

その力を社会とつなげることができれば、アスリートの人生には、もっと多くの可能性がある。

「スポーツに関わる仕事がしたい」から始まった

宮越氏が大学時代の友人とアスレチカを立ち上げたのは、取材時点から4〜5年前。「スポーツに関わる仕事がしたい」。そこから、自分たちに何ができるのかを考えた。

たどり着いたのが、アスリートのキャリア支援だった。アスレチカでは、自身に給与を支払わず、収益をアスリート支援へ充てる形で活動を続けてきた。

ただ、アスリートと向き合うほど、単純に「仕事を紹介すればいい」という話ではないことが見えてきた。問題は、能力ではなかった。

自分が持っている力と、社会とのつながりが見えていない。そこに一つの壁があった。

アスリートの世界は、意外と狭い

宮越氏は、アスリートを取り巻く環境を「村社会」のようだと表現する。

一つの競技に打ち込み続ければ、生活の中心は当然、その競技になる。出会う人も、同じ競技の選手や指導者、関係者が多くなる。

だからこそ競技に集中できる。しかし、その外側にある社会を知る機会は少なくなる。

どんな仕事があるのか。経営者は何を考えているのか。会社はどうやって動いているのか。自分が競技で身につけてきたものが、どんな場所で必要とされるのか。知らなければ、選びようがない。

アスレチカに所属するアスリートたち
現在41競技、160名の現・元アスリートが所属している

そこでアスレチカでは、6か月間のプログラムを通じて、自己理解や社会理解、ビジネスの基礎を学ぶ機会をつくっている。そして、経営者など競技の外にいる人たちと出会う。

アスリートを「社会に適応させる」のではない。すでに持っている力が、社会のどこで生きるのかを一緒に探していく。

「競技しか知らない」が変わったとき

三重県伊勢志摩市で活動する、あるブラジリアン柔術のアスリート。アスレチカのプログラムを通じて地域の人たちと出会い、そこから地域のビジネスにも関わるようになった。

加工品の販売を考える。ECサイトをつくる。人とのつながりを広げる。

宮越氏によれば、数か月のあいだに自らビジネスを生み出すほど活動的になり、見た目にも自信が感じられるほど変化したという。

アスリートだから、ビジネスができないのではない。知らなかっただけかもしれない。自分の力の使い方を。そして、自分が活躍できる場所が競技場の外にもあることを。

「外を見る」と、競技まで変わる

さらに、アスレチカでは意外な変化も起きている。キャリアについて考え始めた選手の競技パフォーマンスが向上することがあるという。

競技以外のことを考えれば、競技への集中が弱くなる。そう考える人もいるだろう。しかし、宮越氏が見てきたのは、その逆だった。

社会を知る。将来を考える。自分の可能性を知る。すると、「競技しかない」という状態から解放される。

宮越氏は、社会を知ったり将来を考えたりすることを「逃げ」と捉えるのではなく、それが競技にも生かせると気づくことで、パフォーマンスが上がることもあると話す。

人生の選択肢が増えることは、今の選択を弱くするとは限らない。むしろ、「自分でこれを選んでいる」と思えるからこそ、今に集中できることもある。

経営者もまた、アスリートから受け取っている

アスレチカには、経営者が参加するビジネスアスリートクラブがある。経営者は、自分の知識や人脈、経験をアスリートへ提供する。

しかし宮越氏によれば、そこで受け取っているのはアスリートだけではない。経営者たちもまた、アスリートから勇気や励みをもらっているという。

結果が出る保証がなくても努力する。何度負けても、また練習する。効率や損得だけでは説明できない時間を、アスリートは生きてきた。そこには、経営者が仕事に向き合ううえでも学べるものがある。

だから、「支援する人」と「支援される人」だけではない。違うものを持つ人同士が、それぞれの持っているものを渡し合う。その関係は、OSUSOの「おすそわけ」という考え方にも重なる。

競技で培った力は、どこまで届くだろう

宮越氏は今、100名の経営者サポーターを集め、アスリートと経営者がつながる持続可能な経済圏をつくろうとしている。

アスリートが競技を終えてから、慌てて社会へ出るのではない。現役のときから社会とつながる。競技で得たものを、自分の次の人生へ持っていく。

宮越氏が証明したいという「一流のアスリートは、一流のビジネスマンにもなれる」という言葉。これは、アスリートをビジネスマンに変えるという話ではない。すでにその人の中にある力を、競技という一つの場所だけで終わらせないということだ。

私たちも同じかもしれない。一つの仕事、一つの肩書き、一つの環境の中で培ってきたものは、そこでしか使えないものなのだろうか。

これまで積み重ねてきたものは、
次の世界へ持っていける。

場所が変われば、自分の価値までなくなるわけではない。まだ、その使い方を知らないだけなのかもしれない。

原 綾香
この記事の構成・監修
原 綾香 はら あやか
言語戦略コンサルタント/元アナウンサー・OSUSO JOURNAL 編集監修

NHK秋田放送局・UTYテレビ山梨(TBS系列)でアナウンサーを務め、取材・構成・番組演出まで担当。NHK放送局長賞を2度受賞。その後、経営者向けコーチング会社で営業No.1を決める「S-1グランプリ」に女性で初めて完全優勝。現在は言語戦略コンサルタントとして、経営者のスピーチや営業のプレゼンを支援。「言葉が変われば、選択が変わる」を軸に、事実と当事者の尊厳を大切にした記事づくりを監修しています。

競技で培った力を、社会へつなぐ

アスリートと経営者が、それぞれの持っているものを渡し合う。アスレチカとOSUSOが目指す関係を。

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