キボッチャがOSUSOとつくる新しい防災のかたち
東日本大震災で被災し、廃校となった宮城県東松島市の旧野蒜小学校。
その場所に新たな命を吹き込んだのが、防災・宿泊・地域交流の拠点「キボッチャ」です。
目指しているのは、災害時に避難する場所を用意することだけではありません。
普段から人々が集まり、地域の資源を循環させ、いざというときに助け合える社会をつくること。
その構想を全国へ広げるため、OSUSOとの連携を進めています。
貴凛庁株式会社の三井氏に、プロジェクトに込めた思いと、OSUSOとの出会いによって広がる可能性について聞きました。

CHAPTER 01「避難所は、我慢する場所」
という常識を変えたい
まず、キボッチャというプロジェクトを通じて、どんな社会を実現したいと考えていらっしゃるのでしょうか。
三井:一番大きいのは、災害が起きたときにも、できるだけ日常と変わらない暮らしができる環境をつくりたいということですね。
日本の避難所というと、体育館などに大勢の人が集まって、プライバシーも十分に確保できないまま生活するというイメージがあると思います。
でも、本来はもっと安心できる場所であっていいはずなんです。
そのために、僕たちは普段から使える民間のインフラをつくろうとしています。
食べ物があって、エネルギーがあって、水があって、人と人とのつながりがある。
そういう場所が全国にあれば、災害が起きたときにも、自分たちで助け合える社会に近づけるんじゃないかと思っています。
災害が起きてから支援するのではなく、平常時から暮らしを支える仕組みをつくるということですね。
三井:そうですね。
防災って、どうしても災害が起きたときだけ意識されがちじゃないですか。
でも、それでは遅いんですよね。
普段から人が集まって、楽しんで、地域と関わっている。
その延長に防災があることが大事だと思っています。
キボッチャでは、宿泊や防災体験だけでなく、食やエネルギー、地域経済の循環などにも取り組んでいます。
僕たちが目指しているのは、単なる防災施設ではなく、暮らしの基盤となる「スマートエコビレッジ」なんです。


CHAPTER 02OSUSOとの出会いで見えた、企業と地域の新しい関係
今回、OSUSOと連携することになったのは、どんな理由からだったのでしょうか。
三井:OSUSOが掲げている、自立分散型の考え方に共感したことが大きいですね。
僕たちも、社会課題を解決するためには、誰か一人が頑張るのではなく、みんなで支え合う仕組みが必要だと思っているんです。
今の社会の仕組みの中で、どうやって持続可能な共同体をつくっていくか。
その方向性が非常に近いと感じました。
これまでもデジタル住民や地域の方々とのコミュニティをつくられてきたと思います。
OSUSOとの連携によって、どんな可能性が広がると感じていますか。
三井:やはり、経営者の方々と一緒に取り組めることですね。
僕たちは全国に防災拠点を広げていきたいと思っていますが、それを実現するには、資金も必要ですし、各地域で中心となって動いてくれる人も必要です。
そこで、経営者の方々に「村長」という立場で参画していただく構想があります。
ただお金を出していただくのではなく、地域の拠点づくりに関わっていただく。
OSUSOを通じて、そういう仲間を増やしていけることを期待しています。

CHAPTER 03支援する企業にも、価値が返ってくる仕組みへ
企業が関わることによって、地域だけでなく企業側にもメリットが生まれるのでしょうか。
三井:もちろん、そこは非常に重要だと思っています。
例えば、企業の従業員の方々が普段から防災の取り組みに参加する。
それ自体が防災教育になりますし、企業の福利厚生やCSR活動にもつながります。
僕たちが大切にしているのは、資金を出して終わりという関係ではないんです。
企業の方々も一緒に活動に参加して、価値を感じていただく。
その結果として、地域にも企業にもプラスになる。
そういう関係がつくれたら、長く続く仕組みになると思っています。
OSUSOとの連携で、すでに動き始めていることはありますか。
三井:全国の拠点を広げるために、経営者の皆さんがどう参画できるのか、その仕組みづくりを進めています。
また、別のプロジェクトとの連携によって、廃校を活用した拠点展開の可能性も広がっています。
これまで僕たちが取り組んできた地域の仕組みを、他の地域でも実現していく。
そのためのパートナーシップを広げていきたいですね。


CHAPTER 042030年までに100拠点。
防災のあり方を全国へ
今後の目標についても教えてください。
三井:2030年までに全国100拠点をつくり、10万人が同時に避難できる環境を目指しています。
一つの施設だけでできることには限界があります。
だからこそ、全国に同じような考え方の拠点を増やしていきたいんです。
そこには地域ごとの特色があっていいと思っています。
使われなくなった学校や土地など、地域に眠っている資源を新しい価値に変えていくことも大切です。
そして、その地域で暮らす人たちが主体となって運営していく。
そういう場所が全国に広がれば、日本の防災は大きく変わると思っています。
最後に、OSUSOにどんなことを期待されていますか。
三井:一緒に未来をつくってくれる仲間が増えることですね。
僕たちが目指していることは、決して一社だけで実現できるものではありません。
いろいろな企業や経営者の方々が、それぞれの強みを持ち寄ることで、実現できることが増えていく。
OSUSOとの連携を通じて、そうしたつながりを全国に広げていきたいと思っています。
災害が起きたとき、誰かの助けを待つのではなく、普段から支え合える社会をつくる。
キボッチャが目指しているのは、単なる避難所の整備ではありません。
地域に眠る資源を活かし、企業と住民がともに暮らしの基盤を育てていくこと。
その挑戦は、私たち一人ひとりに問いかけます。
もしものときに助け合える社会を、私たちは普段からつくれているだろうか。
三井 紀代子貴凛庁株式会社 代表取締役
KIBOTCHA希望、防災、未来。142年の歴史を閉じた旧野蒜小学校を防災教育施設へ。
被災したこの地から、命の大切さを次の世代へ伝える。


